映画「リトル・ミス・サンシャイン」レビュー&あらすじ徹底解説!これが家族だ!

家族が黄色いワーゲンバス(正式名称はタイプII)で旅をしながら、家族の絆を深めていく映画「リトル・ミス・サンシャイン」

ご覧になったことがある方も多いと思います。

もとはインディーズの作品として制作された映画だったのですが、これがたくさんの反響を呼び、全世界で絶賛される名作映画となりました。

今回はこの「リトル・ミス・サンシャイン」について、脚本を細かく読み解きながらご紹介していきたいと思います。

ネタバレしますので、ご覧になっていない方はご注意くださいね!


「リトル・ミス・サンシャイン」とは?

2006年公開の映画「リトル・ミス・サンシャイン」は、ある家族の物語をユーモアたっぷりに描いたロードムービー。

【ロードムービー(road movie)は、映画のジャンルである。旅の途中で起こるさまざまな出来事が、映画の物語となっている。】

引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/ロードムービー

もともとインディーズ作品だったため、低予算で作られた映画ですが、作品の素晴らしさから全世界での興行収入は1億52万ドルを超える結果となりました。

あらすじ
ニューメキシコ州に住むフーヴァー家の母シェリル(トニ・コレット)は、兄フランク(スティーヴ・カレル)が自殺未遂を起こし、自身の家で引き取ることになる。
自らが提唱した「勝ち組・負け組」の自己啓発で成功しようと躍起になる夫リチャード(グレッグ・キニア)、空軍のテストパイロットになる夢が叶うまでは喋らないと決めた息子ドウェーン(ポール・ダノ)、老人ホームから追い出された口汚い祖父エドウィン(アラン・アーキン)、自分勝手な家族に苛立つ母シェリルと、不仲なフーヴァー一家。
そんな家族の中でも明るく天真爛漫なオリーヴ(アビゲイル・ブレスリン)は、カリフォルニア州で行われるミスコンへの出場が決まる。金銭的なことや家族の問題から、家族全員でミニバスに乗ってミスコン会場へと旅をすることになったが…。
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キャスト・スタッフ

リトルミスサンシャイン

リチャード・フーヴァー(グレッグ・キニア)
シェリル・フーヴァー(トニ・コレット)
ドウェーン・フーヴァー(ポール・ダノ)
オリーヴ・フーヴァー(アビゲイル・ブレスリン)
エドウィン・フーヴァー(アラン・アーキン)
フランク・ギンスバーグ(スティーヴ・カレル)

監督はジョナサン・デイトン、そしてその妻ヴァレリー・ファリス。

本作が映画監督としてのデビュー作となり、最も高い評価を得た作品です。多くの賞も受賞し、アカデミー賞では4部門のノミネート、英国アカデミー賞では6部門にノミネートされ、ジョナサン・デイトンとヴァレリー・ファリスは監督賞も受賞しました。

脚本はマイケル・アーント。彼も本作が初めての脚本で、のちに「トイ・ストーリー3」・「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」の脚本も手掛けました。

小ネタマイケル・アーントは、「リトル・ミス・サンシャイン」の脚本を手掛ける際、高畑勲監督のジブリアニメ「ホーホケキョとなりの山田くん」に影響を受けたことを語っています。
自身の脚本を売り込んでもなかなか受け入れられず、あきらめそうになっていた時「となりの山田君」に感銘を受け、「もう一度頑張ろう」と、執筆したのが「リトル・ミス・サンシャイン」なのです。

劇中で夫婦喧嘩のドタバタから、娘オリーヴをガソリンスタンドに置き忘れてしまうシーンなんか、「となりの山田君」で、娘のの子をデパートに置き忘れるシーンにそっくり。

映画「ホーホケキョ となりの山田くん」が描く家族の世界観もとても面白いです。ご覧になったことがない方はぜひ!

ホーホケキョ となりの山田くん

脚本の流れはパーフェクト!

こちらの作品を観て、とても印象的だったのは「ストーリーの流れ方がとても分かりやすい」ということでした。

バラバラで不仲だった家族を、様々な困難を乗り越えながら一致団結に導く描き方は実にお見事!

まさにお手本とも言えそうな「起・承・転・結」がしっかりした脚本を、分かりやすくまとめてみました。

起・承・転・結

  • 【起】バラバラの家族が、全員でリトル・ミス・サンシャインへ出発。
  • 【承】ミニバスで旅をしながら、家族一人一人の問題が浮き彫りに。そこでミニバスの故障。
  • 【転】家族一人一人の問題を家族で解決しては前に進む。そして訪れる祖父の死。
  • 【結】リトル・ミス・サンシャインに到着、家族みんなでピンチに立ち向かい、おんぼろのミニバスで日常に帰る。

【起】バラバラの家族が、全員でリトル・ミス・サンシャインへ出発。

物語のはじまりは、フーヴァー家の母シェリルが、兄フランクを病院から引き取るところからスタートします。題名が映し出される画面には、傷心し自殺未遂を起こした絶望的なフランクの顔。

しかし、フーヴァー一家はお世辞にも仲の良い家庭とは言えません。父親はデリカシーがないし、息子は喋らない、祖父は汚い言葉を吐く、そんな家族に苛立つ母親。「精神的に参っているフランクがいていいの!?」と思ってしまうような家庭。その中で、娘のオリーヴだけは明るく天真爛漫。まさにこの一家の小さな太陽のようです。

序盤の夕食シーンで、家族一人一人が抱える問題について簡単に触れます。

  • 父リチャード‥‥自ら提唱する自己啓発プログラムを売り込むことに必死だが、自身が「勝ち組・負け組」の理論に縛られている。
  • 母シェリル‥‥自己啓発プログラムを強要する夫に苛立ち、夫婦の仲も険悪。家族をまとめようと必死になるが、うまくいかない。
  • 叔父フランク‥‥ゲイであり、恋人と別れた挙句、学者という職を失い人生に絶望している。
  • 息子ドウェーン‥‥空軍のテストパイロットになることが夢。夢が叶うまで「沈黙の誓い」をたて、全く喋ることをしないと決めている。一人の友達も作らず、内にこもっている。
  • 娘オリーヴ‥‥明るく天真爛漫だが、ところどころ「自分の容姿」を気にしている。
  • 祖父エドウィン‥‥好き勝手に生きているようだが、家族のことを最も心配している。

ここで、娘オリーヴがミスコン「リトル・ミス・サンシャイン」の地方予選に繰り上げ合格し、カリフォルニアで行われる本選に挑むことになります。

ずっとダンスを教えていた祖父と、付き添いの母親以外は「行きたくない感」丸出し。

しかし、経済的なこと、自殺未遂した叔父フランクを一人にできないなど、様々な理由により家族全員でカリフォルニアまで行くことに。

【承】ミニバスで旅をしながら、家族一人一人の問題が浮き彫りに。そこでミニバスの故障。

ミニバスに家族6人がひしめき合い出発。小さなミニバスという中に閉じ込められた、相変わらず仲の悪い家族。

この辺りから、先ほど上げた家族の問題が浮き彫りになっていきます。

旅のはじまり早々、苛立ち始める家族を乗せたミニバスが故障。修理所に立ち寄りますが、古い車のため部品の交換に時間がかかると、修理を断念せざるを得なくなります。

修理店の店員が教えてくれたのは、「ミニバスを後ろから押し、速度が出た時点で飛び乗れば走る」ということ。

Little Miss Sunshine-gif

【転】家族一人一人の問題を家族で解決しては前に進む。そして訪れる祖父の死。

ここから、家族の問題が次々と爆発し始めます。

まず、父リチャードの自己啓発プログラムの売り込みの失敗。そして、立ち寄ったガソリンスタンドで、叔父フランクは自殺の元凶ともいえる元恋人と最悪の再会。

暗いムードのまま一泊するための宿に到着します。ここで、父リチャードの自己啓発プログラムの失敗について夫婦で大喧嘩。そしてリチャードは一人、セールスの契約を破棄してきた男のもとへ向かい、言いたいことを言って憂さを晴らしてまた家族のもとへ。

そして翌日、祖父エドウィンと同じ部屋だった娘オリーヴが言います。
「おじいちゃんが起きないの」

祖父エドウィンは眠りながら息を引き取っていました。

「悲しい祖父の死」というシーンですが、物語の冒頭、ミスコン参加が決まって家族で行くか揉めている時、「来なくていい」と言われた祖父は「死んでも行く!」と怒鳴ります。

そして、本当に死んじゃったんです。

病院で死亡確認、遺体安置や葬儀の手配などで、もうミスコンはあきらめるしかない状況になります。しかし、「祖父はオリーヴのミスコンを楽しみにしていた、ミスコンに出ることを祖父はきっと望んでいるはず」と、家族で団結して死んだ祖父を病院からこっそり運び出し、ミニバスのトランクに押し込め、ミスコンへと向かいます。

本当に「死んでも行く」ことになった祖父に、悲しいシーンながらなんだか笑ってしまいます。

そして最後、「沈黙の誓い」をたてていた息子ドウェーンが色弱であることが、オリーヴが病院から持ってきた視力検査表で発覚。

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「パイロットにはなれない」という現実に直面し、暴れ出し叫び出すドウェーン。ここで、彼の家族に対する思いが爆発します。オリーヴからそっと抱きしめられたドウェーンはミニバスに戻るのでした。

【結】リトル・ミス・サンシャインに到着、家族みんなでピンチに立ち向かい、おんぼろのミニバスで日常に帰る。

受付を4分過ぎて会場に到着した一家は、コンテストの出場を断られます。(このミスコンは時間に厳しい)ここまで必死であきらめずにやって来た一家は出場を頼み込み、なんとか出場を許可されます。

そこで息子ドウェーンと、叔父のフランクはホテルの外で語ります。「面倒くさい高校や、何もかもをすっ飛ばしたい」と語るドウェーンに、「悩める青春時代をすっ飛ばすなんてもったいないよ」と語るフランク。

ドウェーンとフランク

この二人は最初から何か通じるものがありました。(もちろんドウェーンは喋っていなかったけど)恐らく、自分の殻に閉じこもるドウェーンと、人生に絶望したフランクには共通するものがあったのでしょう。
また、劇中ではあまり語られませんがドウェーンは母の連れ子。父とは血がつながっていないわけです。対してフランクはそもそもフーヴァー家の人間ではありません。

「家族のはみ出し者」のような不思議な関係が二人にはあり、また、学者として知性あふれるフランクは、大きなニーチェの絵を壁に貼っているような、フランクいわく「見かけによらずしっかりしている」ドウェーンの良き理解者となり得たのかもしれません。

ミスコン会場に戻った二人。周りはみんな厚化粧、派手な衣装で着飾った少女達ばかり。ぽっちゃりとした丸メガネのオリーヴが完全に浮いていることに気が付きます。

そしてコンテストを見続けるうち、確実に「負け戦」となることを確信した父。父と息子は母に、出場をやめるよう言います。

この時、息子ドウェーンは「妹をあんな奴らに評価されたくない」と言います。家族を軽蔑していたような彼が、ちゃんと家族を想っていることが表現されています。

そして父リチャードは「ここはアルバカーキとは違う!」と言います。(一家はニューメキシコ州アルバカーキに住んでいます)リチャードのこの言葉や態度から自分が作った自己啓発方法に縛られ、「負け犬になることへの怖れ」からまだ解放されていないことが分かります。

しかし、オリーヴは最後の特技審査に挑みます。

ラスト、祖父にレッスンされたストリップダンスを踊るオリーヴ。会場からはブーイングの嵐。更には退場すら求められます。しかし、笑顔で踊る娘の側で、家族も一緒に踊りだします。

ここで一番にステージに立ち踊りだすのが父。「勝ち組・負け組」といった自分のルールに縛られなくなったことが分かります。

そして殻にこもっていた息子ドウェーンが、つい最近自殺未遂をした叔父が、オリーヴのために舞台に立って変なダンスを踊ります。ステージに立つ家族の姿に感激して共に踊る母。

結果、家族の個々の問題が、家族の協力によって解決したことを示します。

ここでもう一度、家族一人一人の問題がどう解決したか見てみましょう。

  • 父リチャード‥‥自ら提唱する自己啓発プログラムの「勝ち組・負け組」理論に縛られなくなる。
  • 母シェリル‥‥夫婦円満を取り戻し、家族の絆を再確認する。
  • 叔父フランク‥‥人生の絶望から抜け出し、笑って生きる。
  • 息子ドウェーン‥‥自分の殻にこもるのをやめ、心を開いて話す。
  • 娘オリーヴ‥‥外見にとらわれず、自分に自信を持つ。
  • 祖父エドウィン‥‥好き勝手に生き、そして眠るように死に、家族を幸せに導く。

そして最後はまた、あのおんぼろミニバスを家族全員で押して、飛び乗りながら美しい夕日をバックに家路につくのです。

おんぼろの黄色いフォルクスワーゲンが意味するもの

リトルミスサンシャイン

ここでこの映画のシンボルである、黄色いミニバス(正式な車の名前は、フォルクスワーゲンT2マイクロバスというそうです)が示すもの、この映画に一体どんな影響を与えたのか考えてみましょう。

家族みんなで押さないと動かない

出発早々、クラッチが故障します。そして整備工の「押してスピードが出れば走る」というアドバイス。

それからこのミニバスは、家族が問題にぶつかるたび停車。そして家族が前に進むたびに、家族全員で団結して押して走り出すのです。

つまり、家族が協力しなければ前に進めない、この家族そのものなのです。

ミニバスは家族の象徴

最初、全員でミニバスを押して走らせたとき、家族全員とても楽しそうにしています。母は笑い、叔父は「素晴らしい!最高だ!いい気分だ」と言い、息子も笑顔で達成感のある表情。

そして祖父はオリーヴに「おもしろかったか?」と聞きます。オリーヴは満面の笑みで「うん」と言います。

家族で協力して前に進むのは苦しくても楽しい、幸せなことなのだと感じます。

この家族の表現、とっても好きです。

普段は文句ばっかり言っても、大声で喧嘩しても、それはいたって普通の、正しい家族の形であり、いざとなったらみんなで協力する。家族が苦しんでいたら一緒に立ち止まる。そして前に進めたら、楽しい、幸せ。

フーヴァー家は、どこにでもいる、普通の、もしかしたら私達と同じような家庭なのです。

一見ダメな祖父が教えること

乱暴な言葉使いに、放送禁止用語を連呼する、いわゆる不良のおじいちゃん。

でもこのおじいちゃん、家族のピンチには常に目を光らせています。家族のことを想った発言をちゃんと残してこの世を去るのです。

父リチャード(祖父からしたら息子ですね)が自己啓発プログラムの失敗を聞く電話中、ずっと心配そうに車の中からリチャードを見つめています。そして失敗と分かった時は、手を握り、励まします。

「結果はどうあれ、お前は一人で頑張った。果敢に挑戦したお前を誇りに思うぞ」

その時、母シェリルの表情が少し和らぐのは、祖父の優しい人柄をちゃんと知っていたからかもしれません。祖父が死んだ時の、シェリルの落ち込み様は家族の中で一番ですし、最も悲しんでいるように思います。恐らく、シェリルは悪態をつきながらも、家族を心配する祖父の心を分かっていたのだろうと思います。

そして孫のオリーヴがミスコン前夜、自信を喪失している時も、側に寄り添い、優しく言葉をかけます。

「負け犬っていうのは、負けるのが怖くて挑戦しない奴らのことだ。だがお前は違う」

「私ってかわいい?」と問う孫娘に、「わしがお前に惚れているのは頭や性格だけじゃない。中も外も、美しいからだ」と言う、なんとも粋なおじいちゃん。「お前は世界一かわいい女の子だ」が、オリーヴへの最期の言葉となります。

また、自分の殻に閉じこもるドウェーンに、「一人じゃなくて大勢と寝ろ」なんて下品ともとれる言葉を真剣に語るシーンがありますが、あれはきっと、「大勢の人と関わりなさい」ということだと思います。また、「人生を楽しめ」とも取れます。そしてこれはフランクにも向けられていたのかもしれません。

そしてまさにピンピンコロリと逝ってしまったおじいちゃんは、現実の「死」というものを、死のうとしたフランクに、目の前で見せつけました。

家族や近親者の死は避けられないもの。この恐らく最も辛く苦しい、重大な困難さえも、家族で団結して乗り越えさせたのは、やっぱりおじいちゃんでした。

笑って泣ける、幸せロードムービー

ユーモアが色々なところに散りばめられていて、悲しいシーンすら「ふふっ」ときてしまうけれど、なぜか最後は泣ける、そんな映画です。

映画「リトル・ミス・サンシャイン」、一度観た方も、まだ観ていない方も、ぜひ何度も楽しいんでほしい作品だと思います。

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