ダコタ・ファニング主演映画「リリィ、はちみつ色の秘密」レビュー&考察

「少年や少女が、ひと夏の冒険を経て大人に成長していくストーリー」と聞くと、あの名作「スタンド・バイ・ミー」が思い浮かぶかもしれません。

今回ご紹介する映画「リリィ、はちみつ色の秘密」も、そんな、ひと夏の少女の冒険を描いたストーリーです。

しかし、この映画は、「スタンド・バイ・ミー」よりもずっと大人びていて、「ひと夏の冒険」というよりも、「ひと夏で人生を変えた少女の物語」といえそうです。

少年や少女達が、大人に成長していく映画やドラマは数多く存在します。

そういった意味では新鮮さに欠けるかもしれませんが、内容はずっしりと重く、しかし最後には清々しい感動を感じられる名作だと思います。

成長したダコタ・ファニングの名演技にも脱帽しますよ!

 

 


「リリィ、はちみつ色の秘密」とは?

『リリィ、はちみつ色の秘密』(リリィ、はちみついろのひみつ・原題: The Secret Life of Bees)は、2008年のアメリカ合衆国の映画。原作はスー・モンク・キッドの小説『リリィ、はちみつ色の夏』

引用元:ウィキペディア(Wikipedia)

こちらが原作「リリィ、はちみつ色の夏(原題: The Secret Life of Bees)」の書籍。

リリィ、はちみつ色の夏

2008年に公開された「リリィ、はちみつ色の秘密」、もともとはスー・モンク・キッドのベストセラー小説「リリィ、はちみつ色の夏」の映画化作品。

原作である「リリィ、はちみつ色の夏」は全米で350万部の大ベストセラーを記録しました。

あらすじ
1964年、サウスカロライナ州に住むリリィ・オーウェンズ(ダコタ・ファニング)は、4才の時に誤って母親を銃殺してしまい、その罪の意識に苦しみながら14年間生きてきた。
父親のT・レイ(ポール・ベタニー)は、冷酷で暴力的。亡き妻が自分と娘を置いて逃げたことを未だに許せずにいる。リリィの誕生日である7月2日、ジョンソン大統領 が公民権法案に署名。リリィの家で働く黒人の家政婦ロザリン(ジェニファー・ハドソン)だけが誕生日を祝ってくれた。
その後、リリィとロザリンは、選挙権を取りに行こうとする道すがら、白人から嫌がらせを受ける。反抗したロザリンはケガをして入院。ロザリンを助けてくれない父に反抗したリリィは殴られ、父から「あの日(リリィが母を銃殺した日)、母親が帰ってきたのはお前を迎えに来たわけじゃない。荷物を取りに来ただけだ」と告げられる。
リリィはその日、入院中のロザリンと共に家出をする。
向かう目的地はリリィの母の数少ない遺品に残された、ティブロンという街。母の形見のものと全く同じ「黒い聖母のマークがついた蜂蜜」を手がかりに、蜂養場を営む黒人の三姉妹の家にたどり着く。そこには長女・オーガスト(クィーン・ラティファ)、次女・ジューン(アリシア・キーズ)、三女・メイ(ソフィー・オコネドー)のボートライト一家が住んでいた。
リリィ、はちみつ色の秘密 (日本語吹替版)

キャスト

ダコタ・ファニング

リリィ・オーウェンズ(ダコタ・ファニング)

映画「アイ・アム・サム」で可愛らしくも切ない演技を見せてくれたダコタ・ファニング
アイ・アム・サム
「アイ・アム・サム」当時は7才、本作では14才、現在はもう25才になっています。


クィーン・ラティファ
オーガスト・ボートライト(クィーン・ラティファ)

歌って踊れる女優クィーン・ラティファ。数々のミュージカル映画にも出演しています。本作では歌いも踊りもしませんが、重要な役どころを熱演していますよ。


ジェニファー・ハドソン
ロザリン(ジェニファー・ハドソン)

映画「ドリームガールズ」でヒットしたジェニファー・ハドソン。

ロザリンがリリィの作った物語を聞きながら街に向かうシーンで、リリィが話す物語は「ドリームガールズ」へのオマージュ!よ~く聞いてみると、「シュープリームス」というワードが出てきますよ。
アリシア・キーズ

ジューン・ボートライト(アリシア・キーズ)

ソフィー・オコネドー

メイ・ボートライト(ソフィー・オコネドー)

ポール・ベタニー

T・レイ・オーウェンズ(ポール・ベタニー)

本作では冷たい父親役だったポール・ベタニー。「ダ・ヴィンチ・コード」のあの気味の悪~いシラス役の俳優さんです!

製作総指揮は、ウィル・スミスの妻で女優の、ジェイダ・ピンケット=スミスです!

監督・脚本は、あまり有名ではなく、全部で5作品ほどしか手掛けていないジーナ・プリンス=バイスウッド。

この作品に出演した俳優やスタッフへのギャラはとても少なかったそう。
低予算でしか作ることができなかった映画だったのですが、脚本に惚れ込み、「ギャラが少なくても構わない」と出演を希望した俳優陣ばかりなのだとか。

本作のテーマ

この作品は、かなり重たいテーマを扱っていますが、重すぎて嫌な気分になるシーンは全くありません。

きっと、1960年代の美しい大自然、そしてアメリカの田舎の家の不思議な懐かしさ、また、登場人物たちが着ているカラフルでとても可愛らしい衣装がこの作品を明るく彩っているからだと思います。

そして何よりも、「オーガスト」という包容力を持ったキャラクターが、この物語全体を優しく包み込んでいるからだと思います。

ここからは、この作品について私が思ったことや考察なんかをお話ししたいと思います。

ネタバレしてしまいますので、ご覧になっていない方はぜひ映画の後にお楽しみください!

テーマ1. 誰かを許すことで得られる愛情

物語の冒頭、リリィは「自分を捨てた母親」と「愛してくれない父親」の狭間で、「母親は愛してくれていた」という希望だけを胸に家出をします。

家出の大きなきっかけとなったのは、父親の「あの女はお前をほったらかして逃げたんだ。死んだ日に家に戻ってきたのは荷物のためだ。お前じゃない」という言葉のせい。その直後、「探さないで」という書き置きを残してロザリンの病院に向かうところからも、「母親だけは愛してくれていたはず」という気持ち(というよりも願いかもしれません)の強さがうかがえます。

その後、ボートライト家に居候するリリィですが、三女メイの自殺の後、オーガストに初めて自分が母親を殺したことを伝え、オーガストと自分の母親に関する話を聞くも、母親の家出の際、自分は連れてこられていないという事実を知ることに。

もちろん、母親が身も心もボロボロで娘を連れてくる心の余裕がなかったことは回想シーンからもはっきりしますが、リリィにとっては「愛されていなかったのだ」という判断になり、母親に怒りを覚えるのも仕方のないことです。

翌朝、オーガストが持ってきた母親の形見の中に、自分の写真を発見したリリィは、「愛されていた」と確信とまではまだいきませんが、「そう信じたい」という気持ちにはなったと思われます。

何より、母親のクシに残った髪の毛を、涙を浮かべながら愛しそうに見つめる姿は、リリィが母親を強く愛していることが明白で、怒りという感情よりも「母親に愛されていた」と信じることのほうが自然だと思いますしね。

劇中でオーガストがリリィに語る「完璧な愛なんてない」という言葉。

これは母親と父親の恋愛が本物で、結婚後に愛の形が変わってしまったこと。母親が父親から逃げるのに必死で、愛する娘を置いてきてしまったこと。そしてまた、子守だった黒人のオーガストと白人の母親の友情そのものも表現しています。

  • 「愛していたけれど、時間と共に変わっていくこともある」
  • 「愛しているけれど、自分のことで精一杯で間違いを犯してしまうこともある」
  • 「愛しているけれど、身分が違う」

まさに、「母親からの完璧な愛」を求めすぎていたリリィに、オーガストが忍耐強く、優しく諭したのです。

この後のリリィの心境は大きく変わったものと思われます。

「愛しているけれど、自分のことで精一杯で間違いを犯してしまった母親」を許し、受け入れたことで、心に空いていた穴に愛情がどんどん入っていくような。

それが一番分かるのが、嬉しそうに「有権者になった」と伝えるロザリンに飛びつき、ギュッと抱きしめながら「すっごく愛してる」と伝えるシーン。

それまでのリリィとロザリンの関係には、「不遇な境遇である」という共通点に互いが共鳴しあっていたようなところが多く、「深い愛情」とまでは行きついていなかったと思われるからです。

母親を許せたことで、誰かを愛する心が育まれたと言っても過言ではないと思います。

その後、もうほぼ執念に近い感じでリリィを見つけ出した父親との再会のシーンで、リリィは「パパの辛さは知らなかった」とさえ言います。

そして父親が、「また俺を捨てたら許さんぞ!」とリリィの髪を掴むシーンがあります。

娘が母親にそっくりだったと解釈するのが普通かもしれませんが、私はリリィそのものに向けられていたような気がします。

父親も、「妻に捨てられた」と傷つき、再び娘に捨てられることを恐れる不完全な人間であることを表していると思うのです。

リリィはここで、あんなに憎んでいた父さえも、許しに近い感情が芽生えたのかもしれません。

ラスト、父親から「荷物を取りに来たんじゃない。お前を迎えに来たんだ」という真実を聞かされ、「母親からの愛情」また、「不器用だけど愛してくれていた父親」、そしてオーガスト、ロザリン、ジューンという三人の愛する母親を得たリリィ。自分が愛されていると確信します。

ここで彼女はやっと、「母親を殺した自分を許す」という感情が生まれたものと思われます。

テーマ2. 人種差別

「親と子の愛情」という大きなテーマと共に、この作品のテーマになっているのが「人種差別」。この映画では黒人差別が色濃く残るアメリカが舞台になっています。

この作品のキーマンになるオーガストは、昔結婚しようとしたが、何らかの原因で一人で生きることを決め、ジューンは強気な性格とは裏腹に結婚に踏み切れず、メイは不安定で傷つきやすく、終盤では苦しみのあまり自殺します。

そしてロザリンは黒人差別の末、卑屈になり、同じ黒人でありながら堂々と生きるボートライト家の人々に引け目を感じ、自信なさげにしています。

リリィの恋の相手として登場するザックも、白人に拉致され、憎しみを抱くようになったり…。

しかし、この「人種差別」というテーマはあくまでも目を引くためのテーマであり、サブテーマなのでは?と思います。

リリィは白人なので、人種差別こそ受けませんが、リリィも父親にひどい扱い(精神的な虐待と言っても過言ではないのではないでしょうか…)を受け、ある意味立派な「人権侵害」を受けていると言えます。

「人種差別」をテーマにした映画はたくさんあります。恐らく、人種差別という視点から「リリィの生きにくい子どもとしての立場」を分かりやすくしたのでは?と思います。

感想

リリィ、はちみつ色の秘密 DVD

観れば観るほど、考えさせられることが生まれる作品だと思います。

ファンタジーな要素はない作品ですが、冒頭のリリィが大量のミツバチの幻覚を見るシーン。

私はいつもそこで、リリィの亡き母が愛する娘を救うため、オーガストの養蜂場へ行くように、リリィにしか見えないミツバチを行かせたのかも…と考えてしまいます。

ミツバチがリリィを案内するなんて夢があると思いませんか?

最後に、冒頭の薄暗い紺のような色身だった瞳の印象から、終盤では鮮やかなブルーの、子どもらしい明るい瞳になっているのダコタ・ファニング。彼女のとてつもない演技力というかもう、リリィそのもののような表情には感服です。

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