映画「英国王のスピーチ」レビュー 吃音症だったイギリス国王ジョージ6世の真実

英国王のスピーチ 映画

あなたは、20世紀前半のイギリス国王「ジョージ6世」という人物をご存知ですか?

イギリス王室ってゴチャゴチャしていて分かりづらいですよね。

でも、現イギリス国王である「エリザベス女王のお父さん」と言われればピンとくるのではないでしょうか?

エリザベス女王

そう!このエリザベス女王の実のお父さんがジョージ6世!

このジョージ6世と、彼を支えた平民との友情を描いた映画、「英国王のスピーチ」

この映画は実話をもとに作られた作品で、かなり事実に忠実であるとされています。

今回は、この映画「英国王のスピーチ」の本当の主人公である英国王、ジョージ6世の真実に迫りながら、この作品の魅力についてご紹介していきたいと思います。

これを読めば、この映画をご覧になったことがある方もない方も、この作品をもっと楽しむことができますよ!


「英国王のスピーチ」とは?

吃音症という障害に悩まされたジョージ6世と、その治療にあたった言語療法士ライオネルとの友情を描いた物語。

映画『英国王のスピーチ』予告編
あらすじ
1925年、大英帝国博覧会閉会式に、父である王ジョージ5世の代理として演説を行ったヨーク公アルバート王子(のちのジョージ6世)。彼は吃音症のため、散々なスピーチに終わってしまう。
アルバート王子の妻エリザベスは、彼の吃音症を治療してくれる言語療法士を探していた。そんな中出会ったのが、オーストラリア出身のライオネル・ローグという言語療法士だった。
彼は王族への礼儀作法などお構いなしで独自の治療を施そうとする。その無礼な様に反発し帰ろうとしたアルバート王子に、ライオネルはある賭けを申し出る。その賭けとは、シェイクスピアの「ハムレット」の台詞を朗読できるかというもの。ライオネルは音楽の流れたヘッドホンをつけさせ、自分の声が聞こえない状態で朗読をさせる。朗読を録音したテープを渡されたアルバート王子は二度とライオネルのもとには行くまいと決めていた。
しかし後日、自分の声が録音されたテープを聞いて仰天する。そこにはスムーズに朗読する自分の声が入っていたのである。
それからアルバートはライオネルのもとへ治療に通い続け、二人の間に奇妙な友情が芽生え始める。
そんな時、国王ジョージ5世が亡くなり、アルバート王子の兄デイヴィッド王子が国王に即位。しかし、国王となった兄は離婚歴のある女性との結婚を機に一年も経たずに退位してしまう。
次期国王はアルバート王子。泣く泣く即位することになった彼は、戴冠式に平民であるライオネルを臨席させようとする。しかし、ライオネルはなんの医療資格も持たない人間であることを知らされる。
ライオネルへの不信感を抱くアルバート王子には、戴冠式、そしてラジオでの全国民へのスピーチが迫っていた。

キャスト・スタッフ

ジョージ6世(コリン・ファース

コリン・ファース
主人公であるヨーク公アルバート王子(のちのジョージ6世)を演じたのは、「ブリジット・ジョーンズの日記」でお馴染みのコリン・ファース。

この作品で「第68回ゴールデングローブ賞主演男優賞」を受賞しました。

泣きそうになりながらも、必死でスピーチ練習をする演技には本当に心打たれます。

ライオネル・ローグ(ジェフリー・ラッシュ)

ジェフリー・ラッシュ
破天荒なライオネル・ローグ役を演じたのは、ライオネルと同じくオーストラリア出身のジェフリー・ラッシュ。

「パイレーツ・オブ・カリビアン」のヘクター・バルボッサ役で有名ですね!

シリアスなシーンでも、ポンっとユーモアを投げ入れてくれる、面白くて不思議なキャラクターを好演しています。

エリザベス妃(ヘレナ・ボナム・カーター)

ヘレナ・ボナム・カーター

ジョージ6世を献身的に支える妻、エリザベス妃を演じたのはヘレナ・ボナム・カーター。

「チャーリーとチョコレート工場」の健気な母親役から「アリス・イン・ワンダーランド」の意地悪な赤の女王役まで、幅広い役を演じる素敵な女優さんです。

イギリス王室の物語らしく、オーストラリア出身のライオネル・ローグを演じたジェフリー・ラッシュ以外、ほぼ全員イギリス出身の俳優さんのみです。

監督は、「レ・ミゼラブル」「リリーのすべて」などの監督も務めたトム・フーパー。この「英国王のスピーチ」で脚光を浴びることとなりました。

脚本は、自らも吃音に悩まされたというデヴィッド・サイドラー。この作品への思い入れは強く、30年以上も温めてきた脚本なのだとか。

ちなみに…、「主要人物!」ってわけではないのですが、あのウィンストン・チャーチル役を演じたのはティモシー・スポール。でも!!できれば、2017年公開の映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」でチャーチル役を演じたゲイリー・オールドマンに演じてほしかった!

ゲイリー・オールドマンが扮したチャーチル。

ゲイリー・オールドマン

とはいえ、ゲイリー・オールドマンもかなり特殊メイクをしているので、特殊メイクなしでここまで雰囲気チャーチルになれるティモシー・スポールはある意味凄いかも。

ちなみに本物のウィンストン・チャーチル

ウィンストン・チャーチル 本

「英国王のスピーチ」でのチャーチル役、ティモシー・スポール

ティモシー・スポール

特殊メイクなしでこの雰囲気…!やっぱり似てるのかも…!

実話に基づいたストーリー

この映画が実話をもとに作られていることはお話ししました。

実際に、ジョージ6世は吃音症に悩み、ライオネル・ローグの治療を受けていたんです。

ジョージ6世の実際のスピーチも多数残っています。

The Real King's Speech: King George VI's Stutter (1938) | British Pathé

たまに言葉が詰まる部分、胸が苦しくなりますね。

吃音症とは?

ジョージ6世を苦しめていた吃音症とはいったいどんなものなのでしょう?

吃音症(きつおんしょう)とは、言葉が円滑に話せない疾病、または障害である。「発語時に言葉が連続して発せられる」、「瞬間あるいは一時的に無音状態が続く」などの症状を示す。

引用元:「吃音症」ウィキペディア(Wikipedia)

吃音と聞いて思い浮かぶのは、冒頭の言葉が何度も繰り返される症状(例えば「あ、あ、ありがとう」など)。他にも、言葉が詰まってしまったり、最初の言葉がなかなか出なかったり、発音がうまくできなかったりと、症状は人それぞれのようです。

吃音症になってしまう原因は、「心理的な要因」「遺伝的なもの」、現代では「脳神経の機能不全」も考えられると言います。

吃音症の方にとって、人前で話をするのは苦痛でしかないはず。ジョージ6世もスピーチの瞬間を「地獄にいるようだ」と語っていたそう。

ジョージ6世という人

ジョージ6世
吃音症に悩まされたジョージ6世。

彼は幼少期から内気で大人しく、兄であるデイヴィッドとは対照的だったようです。

兄デイヴィッドは外交的でプレイボーイ。民衆は「立派なキジと醜いアヒルの子の兄弟」とさえ呼んでいたのだとか。

ジョージ6世の父、国王ジョージ5世が死去し、兄デイヴィッドが新国王として即位したのは1936年。しかしその年に、兄デイヴィッドが2度の離婚歴のあるアメリカ人女性との結婚を決め、王位の放棄を宣言。

この時、ジョージ6世の日記には「ひどいことが起こってしまいましたと母に告げ、私は取り乱して子供のように泣き崩れた」と記しています。

国王になることが本当に嫌で嫌でたまらなかった、ジョージ6世の心境がうかがえますね。

王になりたくなかった王を支えた平民

1936年、40才にして王になったジョージ6世は、その重圧からヒステリックになり、ナイフとフォークを投げつけることもあったのだとか。

そんな彼を支えたのが妻エリザベス、そして言語療法士のライオネル・ローグ。

王に即位する前からライオネルを信頼していたジョージ6世は、戴冠式にもライオネルの席を作りました。その席は王族用の貴賓席上部。そこはまさに、戴冠の儀式を行うジョージ6世からライオネルが見える場所。

王族の席に庶民が座るという事態になってでも、ジョージ6世はライオネルに見守っていてほしかったのでしょうね。

その後もジョージ6世とライオネルの友情は続き、ライオネルは言語療法士としてだけでなく、心理カウンセラー、そしてジョージ6世のスピーチライターまでも任されるようになったそうです。

ここで忘れてはいけないのが、妻であるエリザベス王妃!

彼女はジョージ6世の吃音の治療には必ず付き添い、ライオネルの治療を共に受け、国外でも発音の練習ができるよう学んでいたそうです。

まさに内助の功そのもの!

どんな人とでも心を通わせる穏やかで魅力的な女性だったそうで、あのヒトラーが「ヨーロッパで一番危険な女性」と呼んだほど。

即位してすぐは国民に「王には向かない」とささやかれていたジョージ6世も、ライオネルという友人、そして妻の力もあってか、「厳かで心優しい王」と親しまれるようになったそうです。

「英国王のスピーチ」感想

英国王のスピーチ

あのエリザベス女王も大変喜ばれたという本作。

かなり真実に近い形で映画にしているのがお分かりいただけると思います。

この映画で描かれるライオネルとジョージ6世の友情も素敵ですが、私はジョージ6世のとても人間臭いキャラクターに心惹かれました。

うまく喋れなくてイライラして物に当たる。国王という、恐怖の即位が迫ってきて妻にすがって泣く。ライオネルと放送禁止用語を連呼してストレスを発散する。

国王と言えど、一人の人間。

そして、一人の人間としてとても「良い人」なんです。

ジョージ6世が良い人だからこそ、夫のためなら労をいとわない妻と結婚し、真摯になって支えてくれる友人ができたのかもしれません。

そしてまたこのジョージ6世一家の仲が良いんです。凄く素敵な家庭!

映画では兄デイヴィッドが結構チャラついた感じで描かれていて、ジョージ6世の真面目で不器用で優しい性格がさらに際立って見えます。(兄デイヴィッドも自分に正直に生きた良い人なんですけどね)

「類は友を呼ぶ」と言いますが、まさに、一生懸命自分の任を果たそうとするジョージ6世のもとに、彼を支える妻と親友がまた一生懸命側にいるんです。

映画を観ているこちら側も、ついつい「ジョージ6世頑張れ!」と言いたくなりますよ。

イギリス王室の話ですが、決して堅苦しくなく、登場人物も分かりやすいですし、テンポもよく、感情移入しやすい作品だと思います。

観終わったあと、ほっとしたような満足感と共に、自分のコンプレックスや逃げ出したいこと、やりたくないことに立ち向かうパワーがもらえる素敵な作品です。

歴史に名を残す偉人たちにも、地位も名誉も手に入れた人物にも、誰にでも必ずコンプレックスがある!

自分の弱み、欠点と向き合いながら、必死で生きることの大切さを教えてくれる素晴らしい映画でした!

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